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<ライブレポ>天才凡人15周年ONEMAN LIVE『B15THDAY』

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ひょっとしたら、15年目から始まるストーリーもあるのかもしれない――2026年10月7日、SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催された天才凡人の15周年記念ライヴ<15th ANNIVERSARY LIVE『B15THDAY』>の客席から見える景色を眺めながらふとそんなこと思った。

 

 事前に伝わっていたとおり、会場は見事に満席。びっしりと埋まった客席には、この日が特別な夜になることを予感する天凡ファンたちのワクワクが充満し、いまにも弾け飛びそうだ。やがて3人のさまざまな雄姿を映し出すスライド・ショウに続いて、今夜の主人公たちが颯爽とステージに登場。幕開けを飾る「LOVE STORY」から、MiNEとHyonnの歌声が天井をぶち抜く勢いで炸裂する。いつも以上に天井が高く感じられるほど、絶妙に絡み合うふたりの声が空間をぐんぐん押し広げていく。

 

「最高の日にしましょう!」というMiNEのMCに続いて披露された、5月リリースのシングル「Bullet」もまた、観客のハートを矢継ぎ早に撃ち抜いていく。止まるもんか、負けるもんかとばかりに吠え、煽りまくる3人は、いきなりフルスロットル。ペース配分など知ったことかとばかりに「Mr.CLASSIC」「Ring Ring」と畳みかければ、客席からは怒涛の声援が飛び交う。MiNEが「みんなの歓声スゴくて、曲の入りが聴こえんぐらいやった」と話していたとおり、1階席も2階席も大騒ぎで、ステージと客席が互いに火をつけ合うような熱狂に演者たちも驚きを隠せない様子だった。

 

ここでいったんクールダウンのMCタイム。「天才凡人、15歳になりましたぁ~!」というMiNEの咆哮に、客席から「おめでとう!」のあったかい声が返ってくる。「これだけは言わなければいけない、みなさんのおかげでソールドアウトです!」という報告にも、15年分の思いが報われたような喜びが滲む。と、しんみりするのも束の間、横からゴチャゴチャとクレームを入れて場をかき回すHyonnに、「ええパーマあててもろて」と切り返すMiNE。「ありがとうございますっ! いつもよりきつめのパーマあたっております!」と、すかさず乗っかるHyonn。感動に浸る暇さえ与えず、ほっこりムードを鮮やかにひっくり返してみせる。しんみりも笑いも絶妙な塩梅で、最後はきっちりイイ焼き加減に仕上げてしまうこの気取らないサービス精神というか、客席を楽しませることに一切の手抜きがない営業姿勢もまた天凡ならではの名物である。

 

まだ見栄えがキレイなうちに、と会場込みの早めの記念撮影を済ませると、本番はまだまだこっからと言わんばかりに「こっから」へ突入。そこから「GOOD MORNING」「KARAOKE番長」と超ダンサブルなナンバーを繰り出しながら観客をグイグイと熱狂の渦に巻き込んでいく。それにしても、このステージと客席の近さといったら。武道館でやったって、この親密すぎる一体感をいとも簡単に作り出してしまうのではないか、なんて思わせるほど、彼らの辞書には「距離」という文字はなさそうだ。そしてできたてホヤホヤの新曲「TAG」が登場。2日前におぼえたばっかだという振り付けを披露、みんなで一斉に動きを合わせているうち、ふたりの甘く切ないヴォーカルの効果もあって、いつの間にか会場中が多幸感で艶めいていた。さてこの「TAG」だが、やんちゃなサービス精神の奥に確かなポップ・センスが息づく快作で、天凡の新たな名曲と言いたい。

 

序盤が無事に滞りなく終わると、SHIMADAがDJブースからフロントへ移動。喉が枯れんばかりのシャウトで「ほんまにありがとう」を連呼、好青年ぶりをしっかりアピール。一瞬にして場をホットに盛り上げ、フロントマンを大いに嫉妬させるのだった(そんな非凡な好青年DJは「ちょっと、歌うまなった」と自画自賛も忘れなかった)。続いて、巷のチンパンジーたちも揃って腰を振り出しちゃいそうな能天気きわまりない狂騒曲「WAY  WAY」。のあとには、シャンパンや扇風機を携えたスタッフを何人もはべらせ、「やっぱ15周年はちゃあうな」とまったり悦に入るHyonnの自由時間がスタート。「15周年を楽しんでくれてるみんなの顔が見れて、俺ほんましあわせ」とやけに偉そうに口にする彼に対し、手元にあるのはただの真水だけというMiNEから「いま決めました、天才凡人解散します!」という力強い宣言が飛び出す。15周年の晴れ舞台で繰り広げられるあまりにも器の小さな権力闘争。そんな寸劇でひとしきり笑わせたあとは、気を取り直してミッドテンポのコーナーへ。「Rec」「Juice」「GHOST」と並ぶ楽曲では、いわゆるハンサムな天才凡人に早変わり。さっきまでのグダグダぶりが嘘のような変わり身の早さには、15年のキャリアで磨かれた芸達者ぶりがしっかりと表れていたっけ。

 

「皆さんのおかげで最高の景色見させてもらってます」。この日、MiNEの口から何度となく飛び出したこの言葉には、15年というストーリーをここまでつないでこられたことへの、紛れもない感謝が込められていたのだろう。一方、SHIMADAは「15年……いや~長かったような、短かったような、中途半端なような。いろいろありましたよ。なんもなかったような気もするし。まぁまぁまぁまぁ……」と照れ隠しのような言葉で振り返っていたが、この日の満員の客席、そしてそこに広がる笑顔や歓声こそ彼らが積み重ねてきたストーリーの確かな証しであることをしっかり噛みしめている様子だけはキッチリ見てとれた。

 

もちろんHyonnもまた彼らしい方法で感謝の気持ちを目いっぱい表現していた。Hyonn Tシャツを着たのぼり隊を引き連れ、金色の着物羽織ってゴージャスに舞台に登場し、「すいません」を大熱唱。お祭りムードをグイグイ煽り立ててみせ、少々笑い混じりの黄色い声援を浴びまくる。その後も、怒涛の勢いは収まることなく、コール・アンド・レスポンスがバッチリ決まった「お前は俺よりマシ」をはじめ、「俺とお前のヘビーな関係」「ライブハラスメント」と高カロリーなナンバーを連発。会場みんなのタオルまわしが、フロアを揺るがすほどの高揚感を生み出していたことは記しておきたい。

そして、和やかなレゲエ・ビートに導かれて「PARK」がスタート。SHIMADAのワイルド&ラフなラップが炸裂するなか、一瞬行方をくらませていたHyonnの姿が2階席に。そこにいた観客が着込んでいた特攻服を借り受けてステージへと戻り、レゲエつながりで、天才凡人初の映画タイアップ・ソング「ゴングはない」も披露。でもってピースフル・タイムの流れを受け取るようにして、いつも戦い続けているみんなへの応援歌「アラーム」へとバトンタッチされ、徐々に会場の空気がイイ感じにほぐれていく。

 

演奏後「ちょっとだけ気持ちを話させてもらいたい……」とMiNEが少し真面目な表情を見せる。「15周年を迎えるにあたってライヴ会場をどこにするか、メンバーやスタッフと話し合って、前回の14周年ツアー『The Buffet』ファイナルのclub asiaより100人ちょい多めに入るキャパのホールでやろうと。成功するかどうか全員が不安で俺なんかちょっと反対したりもしたんですけど、結果的にここに決まって」。

そしてこれまでの歩みを振り返りながら、ゆっくりと続ける。「15年やってきて、出だしの頃は良いことも楽しいことも多くあってさ、調子良く進んでいたこともあったけど、コロナとかあってうまくいかなくなったこともあったりして、またライヴの動員も落ちたりして。そんななかで自分自身も言い訳するようになっちゃって。年齢のせいとか、仕事が忙しいとか、ツアーとかやっても誰も来てくれへんのちゃあうか、って弱気にもなったんですけど、そんなときメンバーが背中を押してくれた。リーダーと名乗ってはいるけど、それらしいこと何にもできてない。ホントこのふたりに支えられています。ふたりとも、ありがとうございます」。

そして天才凡人らしい言葉で彼は、自分たちの思いを語った。「俺たちグダグダやったりするし、才能があるんかないんかもわからへんけど、皆さんを笑顔にしたいという思いを大切にしたい。皆さんに元気を与えたいって思いだけは、どのグループよりも大きいと自負しているので、これからもいっしょに遊んでください! こんな天才凡人を見つけてくれてありがとうございます!」

 

もはや涙腺がヤバい、これ以上喋るともうダメ、と漏らしながら、曲はライヴ当日に配信がスタートしたばかりの「スクラップ」へと進む。ここに綴られているのは、ガラクタのような自分たちであっても、ここから先へ進んでいくという意思表明だ。決してスマートではないし、ぜんぜん順風満帆だったわけでもない。それでも、抱き合い、じゃれ合いながら続けてきた15年がたしかにある。そんないまだからこそ伝えられるメッセージを今夜はみんなと分かち合いたい。強固な一体感をうながす「引力」を経て、晴れやかな風景を連れてくる「未来への面接」へ。どこにでもいそうな男たちが、ガムシャラな情熱むき出しにしながらもっと高く跳躍しようとする姿に、コブシを高く振り上げながら応える会場。これらの一連のシーンは、本ライヴのハイライトとして位置付けてもいいのではないか?と、あの夜の記憶を辿りながらキーボードを叩いているいまのタイミングにおいても評価は変わらない。

 

天才凡人の魅力は、実にバラエティー豊かで、多面的だ。極上のポップさと底抜けのズッコケ感、マヌケさとカッコよさ、そして笑いと涙。すべてが表裏一体となっていて、彼らならではの音楽とパフォーマンスが形作られていることを改めて実感させてくれたこのアニヴァーサリー・ライヴ。どこまでも腰が低くて、カッコつけてもどこか照れくさそうにしていて、でも笑いを取ることには超貪欲、そんな男たちの作るエンターテイメントはやたらと人懐っこくて味わい深い。

 

 「まだまだ皆さんが僕たちを辞めさせてくれない、ってことでイイんですよね? みんなに天才凡人が間違ってなかったってことを証明するから頼むで! あとは世間にバレるのを待つだけやからよ!」。そんな言葉を放ちつつ、曲は「BRAND NEW WORLD」へ。新しい景色を見せるから、俺らについてきてちょうだい。そんな決意を込めた歌唱の途中、Hyonnは演奏を止め、会場のどこかにいる事務所の社長に向けてここぞとばかりに「やったぞ社長! この先も辞めません!!」と宣言。これだけはどうしても言いたかった、という気迫が伝わる演出からは、15年間ここまでやってきたんだという意地のようなものが透けてみえた。それにしても、ステージ上でジャンピング抱っこする両フロントマンの身ぶりは不思議なほど軽やかで、これから先もまだまだ跳びはね続けてみせるんだろうな、という頼もしい予感は、続く「KILLER TUNE」からもしっかりと伝わってきたし、まだまだ彼らは育ちざかりなのかも、なんてことを思ったりもして。

 

爽やかな余韻を残す「Monologue」でいったん幕を閉じた本編。天才凡人コールの波に迎えられたアンコールは、結成当初のナンバー「TRUST ME」からスタート。2曲目に歌われた、今日という日に欠かせない「BIRTHDAY」では、段ボール製の手作りトロッコに乗って客席へと進んでいくというアイドル顔負けの仕掛けで会場を沸かし、いっそう大きな歓声が響いた。そこに「重大発表」として、全国10か所を巡るワンマン・ライヴの開催が告げられると、あちこちで歓声と共にガッツポーズがあがった。そう、本日のライヴは、単に記念日を祝うってだけではなく、これからいっそう力強く走り続けるから、という固い決意を表明する機会でもあるんだってことを、そのあと披露された「Gift」が代弁していたような気がしてならない。そして、向かい合わせのMiNEとHyonnがシャウトをぶつけ合い、互いの存在を確かめるように歌うパワー・バラード「人生交差点」を経て、ラスト・ソング「ここにくれば」へ。爽やかな笑顔の花が咲く会場に明るいメロディーが心地良く鳴り響いた。

 

 「恩返し」という言葉がこんなに似合うライヴもそうはない。そんな思いが過るようなステージだったとつくづく感じ入る<15th ANNIVERSARY LIVE『B15THDAY』>@SHIBUYA PLEASURE PLEASURE。この日のライヴに向けて書かれた特別メッセージでSHIMADAは「30年後もやってるかもよ!」と書いていたが、あながち冗談じゃないかも、と今回やたらと感動的なストーリーを紡いでみせた彼らを眺めながら思ったりしている。いや、むしろ、ここからが始まりなのかもしれない。

 

ライブレポート執筆 : 桑原シロー